SixTONES「わたし」MV 感想

SixTONESのニューシングル「わたし」のMVが昨晩22時に公開された。


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わ~~そうですか、そう来ましたか。

楽曲「わたし」は、メンバーそれぞれの声の「生っぽさ」を際立てた、割とシンプルなバラードって印象だったので、想像以上に丁寧に世界観を構築したMVに、良い意味でびっくりしてしまった。

あとからご本人のツイートで知ったけど、映画『佐々木、イン、マイマイン』の内山拓也さんが監督ということで、映像の美麗さにも納得。近年で一番映像にやられた邦画だもの。監督は29歳で、KingGnuのMVなども制作されているらしい。こういう起用めちゃくちゃ嬉しい。「今」を取り入れていってくれ。

 

 

映像は、どこか暗くて閉鎖的な空間を歩く松村北斗の後ろ姿から始まる。画面もかなり暗くて、目を凝らさないと誰だか一瞬わからないくらい。後ろ手に持っている花束だけが色鮮やか。

特に印象的な青い花は、メイキングコメントによると「ニゲラ」という花らしい。花言葉の一つは「本当の私」。そんなところからも、細部までこだわった作品だということが伝わってくる。

 

Aメロ、Bメロはメンバーが入れ替わり立ち替わり現れるワンカット。空間も狭いので、映り込みがないように撮るのは大変そう。ワンカットといえば以前アルバム曲からMV作成された「Strawberry Breakfast」も全編ワンカットだった。シーン切り替えがないから、グッと画面に没入させる力があるよね。


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「わたし」は現在放送中のドラマ『恋なんて、本気でやってどうするの?』の主題歌であり、ドラマでヒロインの相手役を務める松村北斗のパートから始まる。

ありえないところまで 心が動き出す

北斗の歌声は、役者としての演技と同じようにとても繊細で表現力豊かだと思う。まるでセリフのように感情のこもった歌い出しに、ドラマ内で流れるたびドキッとさせられる。(ドラマ自体はめちゃくちゃ頑張らないと見ていられない感じだが、それは置いておいて…)

 

北斗が目線を移した先にカメラも移動して、椅子に腰かける京本大我が映る。

何気ない言葉すら 一つ一つこの胸を 奪ってゆく

立ち上がって目線を合わせ、北斗が後ろ手に持っていたニゲラの花束を差し出す。そこでタイトル。二人の間に細い白字で「わたし」。最近映画ポスターでこれに近い雰囲気のフォントよく見かける気がするけど、ふつうにカッコいいからいいよね。

京本が花束を受け取りかけたところで、さっと移動するカメラの演出もにくい。じれったい。

 

移動したカメラは、顔に手を当てて鏡の前に立つ田中樹を映す。樹が鏡の前からいなくなると、すれ違うように鏡の中を通りすぎるジェシージェシーは樹にとって「もう一人のわたし」なのか、それとも「わたし」にとって特別な誰かなのか。ファンの解釈も盛り上がる。

こういった表現からもわかるけれど、今回は恋愛ドラマの主題歌でありながら、まさにタイトル通り「わたし」にフォーカスを当てた歌詞やMVになっているところが面白いと思う。あくまで「対他人」ではなく、「対自分」の内面的な物語になっていて。

たとえば上に挙げた「Strawberry Breakfast」のように、異性間恋愛を描くためだけの記号みたいな女性を登場させるのよりも、今回のMVのほうがずっと好きだ。(もちろん「Strawberry Breakfast」も好きだけど)

ただ、数は多くないし直接的ではないけど、メンバー間の恋愛を連想させるような表現ともとれる。作品としてはアウトじゃないけど、クィアベイティング的な観点から、ファンもちょっと冷静になりたいねとは思ってる。アイドルは特にそういうの常態化してるからね。

 

鏡の中のジェシーから本物のジェシーにカメラは映り、その手には花束。

汚れた靴磨いても またすぐにどうせ泥だらけになるんだ

「わたし」、シンプルなバラードながらここまで「聴かせる」曲になっているのは、SixTONESメンバーの歌唱力や表現力の高さの賜物だと思うわけだけど、今回特にジェシーが特出してる。

普段の印象とは離れた優しくスイートな歌声はジェシーの武器の一つで、それがこんな風にストレートに活かされる楽曲ってこれまであんまりなかったんじゃないかな。バラエティでしかジェシーを知らない人が、音楽番組で「わたし」を見て驚く日が今から楽しみだ。

 

田中樹、

無駄なことで疲れるくらいなら

森本慎太郎京本大我

いっそほら さっさとさ そんなものしまっておこう

森本慎太郎

分かってはいるよ

髙地優吾、田中樹、

きっと逃げてるだけだと

この辺は、かなりドラマ「恋マジ」を意識した歌詞になってる印象。恋愛に憶病になり、「恋愛なんていらない」と公言している主人公や、「本気の恋」ではなく「遊びの恋」ばかりしている、北斗演じる長峰柊磨の気持ちを歌っているんだと思う。(私はドラマはちょっと……なので、その点に関しては感慨はなし)

 

カメラは次々に歌うメンバーを追い、サビ前のフレーズを暗がりから現れた北斗が歌う。

あなたにわたしは見せたくない

そこで画面が切り替わり、少し開けた幻想的な部屋でサビのダンス。6人のSixTONESが2人ずつのペアを作り、ペアの片方は花束を持っていて、サビ終わりにもう片方へ手渡す。

周囲に張り巡らされたカーテンは、消極的になっている歌詞の主人公の心を表すのだろうか。ここでもやっぱり、花束を渡す相手が「わたし自身」なのか「他の誰か」なのか、判然としない。わたしの心まで入り込んできた誰か……でもいいけど、やっぱりタイトルが「わたし」なので、内面世界での「もう一人の自分」とのやりとりを表してるのかもしれない。

 

ちなみにこの曲、初めて「ザ・少年倶楽部」でパフォーマンス披露したときに「踊るんだ!?」ってびっくりした。バラ―ドなので勝手に止まって歌う姿を想像してた。実際、去年のシングル「僕が僕じゃないみたいだ」はスタンドマイクに棒立ちで歌唱だったし。

でもダンスするほうがSixTONESっぽいと思ったし、想像以上にカッコよかったので良し。やっぱり音楽番組で観るのが楽しみだ。

 

そしてサビ直後の髙地優吾パート。

その意味は その価値は 答えようのない問いだけど

ここ、曲だけ聞いた限りでは、ハモりも入ってるしあんまり髙地の印象が強くなかったんだけど、映像で見てびっくり。なんてセクシーすぎるんだ。最近わかってきたけど、この人、ハマったら抜け出せないタイプの底なし沼アイドルだな……。

 

髙地からシーツを奪って頭にかぶり歌う京本大我パート。

それなのに、なぜ それなのに、なぜ
何か見つけたような気持ちでいる

ここもめっちゃいい。歌がうまい人の本意気の歌を存分に聞ける喜びをひしひしと感じる。「なぜ」の感情表現もさすが。映像的には、ハモりの慎太郎が後ろにさりげなく映っている演出がおしゃれだ。

 

うつ伏せに倒れ、花束を握るジェシー

分かってはいるよ きっと素敵なことだと

花束を受け取り、ジェシーの顎を持ち上げる北斗、

それでもわたしが追いつかない

「わたし」の歌詞が面白いのは、恋愛ソングのはずなのに、突如として発現した恋愛的な感情に戸惑い、抗い、それでも抗いきれない……までのところから、先に進んでいないところ。

一般的な恋愛ソングなら、最初は主人公が消極的でも、愛に目覚めるところまで歌詞に入れそうな気がするけど、この曲では「あなたにわたしは見せたくない」「それでもわたしが追いつかない」と、「何か見つけたような気持ちでいる」のにまだ、踏ん切りがついていないんだよね。

その雰囲気がこのCメロに現れていて。そして何よりラスサビ冒頭の田中樹の

ありえない

だよね。「!」つけたくなるくらい、心の底から叫んでる感じが伝わってくる。ありえない、信じられない、受け入れがたい。そんな動揺と、でも抗えず受け入れざるを得ない諦め。想像力を掻き立てるすごいワンフレーズだと思う。田中樹の声の力って、やっぱすごい。

 

最後のサビでもまだ答えは見つかっていない。「わたしを奪ってゆく」そこで終わってる。ジェシーの余韻の残し方がうまい。「わたし」がどうするのか、わからないまま曲は終わっていく。

そこがすごくいいよね。ジャニーズの「王道」を行くつもりのないSixTONESらしいし、個人的な好みとしてもこのくらい曖昧であってくれたほうが好き。

 

ただ、主人公の感情の行方が全くわからないわけではなくて。1回目のサビのカーテンの閉じた薄暗い部屋から、ラスサビでは光の差し込む部屋に変わっている。しかも、これはTwitterで指摘している人がいたから気づいたんだけど、1回目のサビとラスサビで、メンバー同士で服装が入れ替わってるって。

でええっ、ほんとだ。暗くてよく見えないから気づかなかったけど服装が入れ替わってる。

部屋に光が差し込むのはわかりやすいけど、服装チェンジは何を意味するのだろう……。ペアの相手が「もう一人の自分」だということを暗示してる? それとも、心の扉を開けて「他の誰か」と共有するイメージだろうか。

 

あと、これは私が無学ゆえにわからないのかもしれないけど、最後に意味深に映る穴の空いた壁は何? モノリス

 

正直、今まではあまり世界観の凝ったMVが少なかった印象のSixTONES。まさか「わたし」でこんなに想像力を掻き立てるMVが見れると思っていなかったので嬉しい。今度からおすすめのMV聞かれたら「わたし」って言おう。メンバーそれぞれの歌唱の良さも伝わりやすいし。

あっ、でもSixTONESはダンスやラップもいいんです。何よりおすすめなのはLIVE映像です。わちゃわちゃしてるバラエティ動画から入るのももちろんアリです……。

ああ結局おすすめはまとまらない。発売は6月8日。それまでにMV100回見るかも。